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映画『ソフト/クワイエット』感想

映画
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こんにちは。

さいきん見た映画の感想を書くサトーです。
ちょっとだけネタバレしています。

ストーリー

とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。

教会の談話室で行われた第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。

やがて彼女たちはエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。

腹の虫が治まらないエミリーらは、悪戯半分で姉妹の家を荒らすことを計画する。しかし、それは取り返しのつかない理不尽でおぞましい犯罪の始まりだった……。

感想

いやあ、凄まじい映画でしたね。

あらすじを雑にいうと、
女子会で盛り上がってテンションぶち上がってしまったがために、悪ノリでヘイトクライム全開で突き進んでしまい、犯罪者になってしまう人々のお話です。

驚異的なのは全編ワンテイクで撮られていることです。
ワンテイクかな?まさかなーと思っていたら、監督がインタビューでそう言っていました。
ワンテイクなんですって。
キャストには「劇を撮影するのだ」と伝えて撮ったそうです。言われてみれば劇のようでもありますね。

興味深いのは、この映画ではヘイトクライムに突き進むのが女性であることです。
男性は2人出てきて、そのうち1人は集会場になった教会の神父で、
もう1人がエミリーの夫です。
この2人の男性は冷静で、エミリーたちの言動にすぐに危機感を感じるんですね。

で、夫のほうはエミリーたちを止めようとするんですけど、拒否されるんです。
今までだったら、ここは男女の役割が逆転してると思うんですけど、ここでは暴走して歯止めがきかなくなるのが女性なんですね。
そこが興味深いです。

アーリア人団結をめざす娘たち

アーリア人団結をめざす娘たち」を結成したエミリーは、グループの中心的な人物です。
エミリーは自称・良妻賢母で、自称・優れた遺伝子を持つ白人女性で、幼稚園の先生で、不妊治療をしています。

で、自分のことを「良妻賢母」と言う人が、嬉々として人種差別発言をして行動に移すんですね。
で、夫が自分の考えに反対すると(アルコールのせいもあるのか)、
夫を「腰抜け 私に軽蔑されてもいいの?」と言い、脅します。

見てる側としてはどこが良妻賢母だよ、と思うんですが、彼女の中では整合性が取れているみたいなんです。

エミリーの知人のキムは食品や雑貨を扱う店を営んでおり、子持ちです。
キムの店で働くレスリーは刑務所帰りです。
マージョリーは仕事と生活レベルに不満があり、コロンビア人に仕事を奪われたことを根にもっています。

この4人が飲酒の末に暴走して、犯罪を行うんですね。
アーリア人団結をめざす娘たち」には他に2人の白人女性がいましたが、最後まででてくるのはこの4人だけです。

で、エミリーやキムは気に入らない人のことは誰でも文句を言うんです。
自分が見下したマージョリーのことは面と向かってバカにするし、怒鳴るんです。レスリーもだんだんと本性がでてきて、最後はエミリーに対しても怒鳴って脅迫するようになります。

このあたりがね、気に入らないやつは怒鳴って力でねじ伏せるみたいな、負のヒエラルキーが存在してるようで嫌なかんじですね。
人種に関係なく怒鳴り散らすんなら、ただもう性格が悪いだけじゃないかと思うんですけどね。

家屋侵入

エミリーたちがアジア系のアンとリリーの家に侵入するんですけどね。
この時、嬉々として他人の家に侵入し、物色し、家中を漁る4人が映されるんですよ。

これを見てね、私の頭に浮かんだのはパレスチナパレスチナ人の家に侵入し、パレスチナ人の家財道具を物色して収奪し、その画像をSNSにアップするイスラエル兵です。
イスラエル兵がなぜあんなことをやるのか理解できなかったんですけど、映画のエミリーたちを見てたら、ああ、集団でこういうテンションになったらやるんだろうなと妙に納得できたんですよ。

こういう時のこの人たちの思考としては、自分たちは1ミリも悪くない、無礼な相手が悪いんだと思ってるらしいんですよね。
完全な他責思考です。
普段は素敵な幼稚園の先生を気取っているエミリーが、野蛮人になってるんですよ。

こういう悪ノリで人を殺す人って本当にいるんだろうなと思うとゾッとしましたね。
人間は決して高貴な生き物じゃないんですよね。
こういう時に一線を越えない判断ができるのは、教育なのか環境なのか、それとも他のものなのか・・・と考えてしまいました。

エイミー・クーパー

公式サイトで監督のベス・デ・アラウージョは、脚本を書き始めたのはエイミー・クーパーのビデオが出回った翌日から、と言っていました。

エイミー・クーパーというのは、セントラルパークで黒人男性に脅されたと嘘をついて通報した結果、虚偽罪で訴追され家も仕事も失った人です。くわしくはこちらの記事を読んでください。

www.bbc.com

www.cnn.co.jp

ちなみに、この事件が起きた日にジョージ・フロイトさんが警官の頸部圧迫により死亡する事件も発生したそうです。

監督

公式サイトで監督は、

「この映画に登場する女性たちのような人からは、目を背けていたほうがむしろ安全です。彼女たちを無視することができれば、その存在を消すことができるかもしれないという錯覚に陥るのです。そういった考え方が、白人至上主義を支えています」

と言っています。
映画に衝撃を受けた人は、ぜひ公式サイトの監督のインタビューも読んでみるといいですよ。

アメリカで非白人として生きる人間の困難や屈辱が少しは見えてくるでしょう。

まとめ

凄まじい映画でしたね。
映画の中で被害に遭うのはアジア系なので、日本人の私としては見ていて楽しくはなかったです。
それでも見てよかったと思いますよ。

それにしても、主人公たちにぜひとも罰を受けて欲しいと思う映画はそうはないですね。

それでは、お読みいただきありがとうございました。

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